日本では欧米や中東と比較して、宗教的儀式は盛んであるが、信じている人は極めて少ない。
キリスト系や仏教系などの高校・大学で多感な時期に宗教の授業を受けても、入信する人は滅多にいない。
先頃、映画化された遠藤周作の「沈黙」では江戸時代、幕府の弾圧に耐えながら、命がけで布教活動をしている宣教師の姿が描かれている。
その宣教師が「なぜ、神は沈黙しているのか」と嘆くのだが、映画を観た友人がひとこと。
「存在しないから、返事をするわけがないよな」彼は関西のキリスト教系大学の出身だった。
自動運転や火星への移住などが現実味を帯び、これだけ科学が進めば、神様の居場所はどんどん狭くなっているようだ。
しかし、宇宙や遺伝子の神秘を探る最先端の研究者は解明が進めば進むほど、「偉大な存在」の影を色濃く感じると言う。
例えば、遺伝子情報である。筑波大学名誉教授、村上和雄氏によれば、ビジネス書3万冊に相当する30億文字を超える遺伝子を苦労しながら解読した研究者は、
解読後、精緻な設計図を書いた「偉大な存在」について考えざるを得ない。
地球温暖化やips細胞による治療など次々に大きな問題に直面する日本。宗教を持たないで歩を進めるその姿を世界は奇異の目で見ているのかもしれない。
(山口伸一)