クラシック通ではないが、最近は年末に第九を聴くことが多い
1年の締めくくりに、完璧な音楽に体を浸すと人類の偉大さや尊厳すら感じる
ベートーベンの音楽についても大した知識はないが、人生についてはもっと知らないので、ロマンロランの伝記を読んでみた
20代後半に難聴になり、職業柄、それを必死に隠し、失敗
恋愛はいつも失恋
商売は、聴衆におもねる作曲家の方が人気があり、いつも貧乏
さらに肉親が少なかったため、弟の子供を義理の妹から強引に預かり。甥っ子はストイックな生活に耐えられず、彼を憎み、放蕩する
この大作曲家はとてつもなく大きな悲しみを抱えていたことが分かった
耳が聞こえないが、田園では記憶をたどり、鳥のさえずりを表現した
人間への参加として第九では大合唱団を終盤に起用した
夏目漱石もロンドンでの苦い体験のあとに大作家に変身した
偉大な芸術家は、多くの困難を乗り越えて、最高の作品にたどり着くのだろう
芸術家になるつもりはないが、ベートーベンの背負った悲しみに比べれば、我々のそれは大したことはない
私のよう弱い人間にとっては、自分より不幸な人の存在は心を落ち着かせる材料となる
大作曲家ならなおさらである
今年の第九はいつもよりリラックスして聴けるかもしれない
(山口伸一)