鴻上尚史氏の「不死身の特攻兵」は読むと切なくて怒りがこみ上げてくる。
敗戦が濃厚なのに尊い命を犠牲にしてまで戦争を継続した理由は何か?
それは軍部という組織の存続である
そして最後は命じた側の個人の保身である
特攻隊という軍事行動は、追い詰められた日本が最後にとった抵抗手段で、
戦果が過大に報告されたこともあって、
戦死を遂げた特攻兵は国民から軍神と崇められ、美談として語られている。
が、米国側はその無謀さに驚き戸惑ったが、大きな被害はなかった。
当然である。
重い爆弾を載せ、空から小さな点にしかみえない艦隊に向かって、
砲火をかいくぐって急降下するのは、高度な技術が必要だった。
最初にベテランパイロットをあてがい、パイロットも飛行機の不足すると、
性能の低い飛行機を若い未熟なパイロットが操縦するようになった。
さらに機体を軽くするため、武器を外し、速度の遅い飛行機では、米国の偵察機に見つけられ、
すぐに撃ち落とされた。
まさに自殺行為であり、命を粗末にしている最低の作戦で、
借金を支払うために宝くじを買い続けるような愚かな作戦だった
だが、宝くじを買い続けている間は、軍部は存続した。
戦後、自殺行為を命じた上層部は責任を追及されず、
国民も特攻兵さへもそれを忘れようとし、ただ、豊かになりたい一心で未来に向かって走り続けてきたように思う。
その結果、上層部が「組織のために」と正論や個人の幸福を犠牲にすることを現場に強制する遺伝子は継承され、
公害を出し、粉飾決算を行い、データをねつ造し、検査をごまかす大企業は一向に後を絶たない。
命じられる側として、上層部の命令や指示に従わないのは難しい。
「はい」と返事をして実行する方がよほど楽である。
ただし、その命令の背景の目標や目的は理解し、更に納得して欲しい。
聞きにくくても質問することこそ、真のコミュニケーションであり、頭を腐らせない実効策の一つである.
(山口伸一)